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研究本部 開発日誌

vol5.設立前の出来事

寒々しい冬の曇り空の下、所長は全くまぶしくもないのに、まぶしそうに眼を細め
ていた。所長は今、先日の藤間 袴(とうま はかま)とのやり取りを振り返り、ヘンな
言葉使いで思わず声を荒げてしまった未熟な自分に対して猛烈に恥ずかしさを感
じていた。 「藤間が不安に思うのも無理ないか。。大口叩いている私でさえ、つい
最近まで決意を固めきれずにいたのだから。」
所長はやがて細めていた瞳をそっと閉じ、研究所が設立されるほんの数週間前の
出来事を思い出しはじめた。

―当時の所長はまだ(株)アズ本体に在籍し、間近に迎えた研究所OPEN準備に
追われつつも、心のどこかでまだ決意を固めきれず悶々とした日々を過ごしていた。
そんなある日のこと、(株)アズにクレープ肌着の取材の申し入れが来たということを
所長は小耳に挟んだ。申し入れてきた相手を詳しく確かめることもせずに、繊維系
業界新聞からの取材と思い込んだ所長は、もうすぐOPENされるステテコ研究所を
PRする絶好のチャンスとばかりにその場に臨んだのだが、会話が始まって数秒と
経たない内に、これが単なる取材などでは無いということに気付いたのであった。

それは、服飾評論家として御活躍されている池田哲也さんとの出会いであった。(続)

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