旅するラクダ – ヨーロッパ編 Vol.2 – バルト海を行きつ戻りつ、サウナに目覚めるラクダインナー

フィンランドで開催された「ウールソックス ランニング選手権」を走り終えたグラフィックデザイナーの伊藤 裕さんの旅はいよいよ後半へ。すっかり仲良くなったラクダインナーたちと共に、フェリーから飛行機、バスから寝台列車とあらゆる乗り物を駆使し、エストニア、スイス、オランダ、そして再びフィンランドへと、4カ国を巡ります。

 

Traveler & Diary : Yutaka Ito

Photography : Yutaka Ito

Edit : steteco.com

 

 フィンランドで人生初の「靴下レース」を走り終えた伊藤さん。レース会場近くのホテルで目が覚めると、窓の外は雲ひとつない快晴。東北育ちの伊藤さんは経験上こういう日は気温が下がることをよく知っていましたが、念のために調べてみると、なんとマイナス10℃。上下のラクダインナーをしっかり着込んで防寒対策をし、来たときと同じように、バスと列車を乗り継いでヘルシンキのフェリーターミナルへ向かいます。

 伊藤さんが乗船するのはバルト海の船会社タリンク・シリアライン(TALLINK | SILJA LINE)のメガスター号。その名の通り、全長212.2m、最大で2,800人が乗れるという巨大なフェリーで、エストニアの首都タリンまで約2時間の海の旅です。夕暮れのデッキに出てみると360度流氷の絶景に囲まれていました。

 宿にチェックインを済ませ、世界遺産にも登録されているタリン旧市街を散策。中世の面影を残した石畳の街並みが美しいエストニアですが、実はヨーロッパ随一のデジタル国家でもあります。街では実用化された「宅配ロボット」が稼働しているそうで、散歩中に伊藤さんが見かけたときは道の段差で立ち往生していたロボットを通行人が助けてあげていたそう(写真右)。心温まるシーンですね。

 旅程の都合上、タリン滞在はわずか一晩。翌朝は早くにタリン空港へ向かい、フィンエアーに乗ってヘルシンキに戻り、この旅3カ国目、スイスのチューリッヒ行きの便に乗り換えます。

チューリッヒ国際空港ではスイスタイポグラフィに迎えられます(グラフィックデザイナーにはたまらないらしいです)。さらに空港内の売店では新聞や雑誌のコーナーが他国に比べて桁違いに広かったのだそうです。各国の空の玄関口にも、その国らしさというのがあるのですね。

 半日ほどチューリッヒ北部の「Noerdエリア」を散策したのち「SBB CFF FFS(スイス連邦鉄道)」の赤い特急(RAB e501型)で約1時間、一路バーゼルへ。伊藤さんはスイスの時刻表のレイアウトが大好きだそうで、何時間でも眺めていられるんだとか。タイポグラフィと鉄道が好きな人にとってスイスは特別な国のようです。

 バーゼルに来た主な目的は、この時期に三日三晩行われる「バーゼル・ファスナハト(Basler Fansnacht)」というお祭りを見るためでした。14世紀にまでさかのぼるスイス最大のカーニバルでもあり、総勢1万人を超えるカラフルな衣装をまとった楽団が市内各地をまわり、日本のねぷた祭りのような大きな灯籠が現れたり、それぞれのグループはスジェ(フランス語でテーマ)と呼ばれるこの1年の間に身の回りに起きた話題を取り上げてメッセージにして配るのだそうです。

 お祭りを堪能した後は「ナイトジェット(nightjet)」という寝台列車に乗って、4カ国目のオランダへ。列車は4人部屋のコンパートメントを予約しましたが、部屋には伊藤さん一人だけという贅沢な移動だったそう。上下のラクダインナーで快適に夜を過ごし、翌朝はなぜか足を細く長く撮影する方法を探り始めてしまいました。列車は一路オランダ第4の都市ユトレヒトへ。

 列車を降りて向かったのは、オランダ人建築家「へリット・トーマス・リートフェルト(Gerrit Thomas Rietveld)」が設計した「シュレーダー邸」。デ・ステイルという20世紀初頭のオランダの建築様式を色濃く反映したシュレーダー邸は、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

 再び列車に乗って、次はオランダの首都アムステルダムへ。友達を訪ねたり、ギャラリーや海運博物館(船のお絵描き会が開かれていました)に立ち寄ったり。オランダ滞在の最終日はお気に入りのチーズ屋さん「De Kaaskamer(デ カースカーメル)」でサンドイッチを作ってもらい、アムステルダム・スキポール空港から三度ヘルシンキに戻り、帰国までの数日間を過ごします。

 長いようで短かったこの度最後のヘルシンキ滞在。念願だったアイスホッケー観戦にはラクダインナーがとても活躍してくれたそうです。夜はフィンランド名物のサウナにも挑戦。友人夫婦に教えてもらった、1928年創業の老舗のサウナ「Kotiharjun Sauna(コティハルユン・サウナ)」で温まりました。まるで大衆居酒屋のような雰囲気で、なんと建物の前で外気浴できてしまいます。ポカポカになった伊藤さんはラクダの腹巻きを胸から腰まで「伸ばして」帰ったそうです。「サウナの後の腹巻きは最高!」とのこと(笑)。

本場のサウナの魅力にハマった伊藤さん。翌日はヘルシンキからバスで1時間ほど行った森の中にあるオールドスタイルのスモーク・サウナ「クーシヤルヴィ・サウナ(Kuusijärvi Sauna)」に。温まった後は氷が張った冷たそうな湖に入るのだそう。大丈夫でしょうか!?(大丈夫だったそうです(笑))

衝撃的なラクダインナーと凍った湖の写真とともに「フィンランドでのサウナ体験は言葉にし難いすばらしい体験だった」と語る伊藤さん。大満足でヘルシンキに戻り、あとは帰国の飛行機に乗るだけです。

オランダを走る列車の窓から見えたヒツジさんの群れ

 旅を振り返って伊藤さんは「今回ラクダ(インナー)と一緒に旅をした僕は、牡羊座の生まれで、干支も未年です。ヒツジとラクダの相性は良さそうなので、これからもニッチな旅に一緒に出かけたいです」と締めくくってくれました。

 今回はグラフィックデザイナーの伊藤 裕さんに協力いただき、「長袖シャツ」と「ももひき」と「腹巻き」の3つのラクダインナーを連れて、全日程15日間、ヨーロッパの4カ国を巡る旅のようすをお届けしました。前半はフィンランドのウールソックス ランニング選手権への出場、後半は移動に次ぐ移動の旅を通じ、自在にラクダインナーを使いこなしてくれました。

 そんな「旅するラクダ」ですが、これからも国内外各地へ旅するようすをご紹介していきます。次回もどうぞお楽しみに。

 

伊藤 裕さん

岩手県出身のグラフィックデザイナー。大きな体いっぱいに「紙」と「文字」と「地域の物語」への関心が詰まっている。好物は地元の長沢屋の「黄精飴」。雨天時はできるだけ傘はささずにフードで対応するタイプ。

Instagram : @erykahforbidden

 

 

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