フィンランド・ハラッカ島の吉澤葵さんへパジャマをお届け(月刊ステテコ11月号)

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@Ryu Itadani
@Ryu Itadani

今月の絵『FINNAIR』 by Ryu Itadani

フィンランド・ハラッカ島の吉澤葵さんへパジャマをお届け

 近年、冬になるとご縁がある北欧の国フィンランドですが、今シーズンはヘルシンキ在住のアーティストでデザイナーの吉澤 葵さんとのコラボレーションが叶い、半纏とパジャマを作ることになりました。

 発売の準備を進めていたある日、以前ラクダインナーと共に北欧を駆け巡ってくれたグラフィックデザイナーの伊藤 裕さんが再びフィンランドへ飛ぶとの噂を聞きつけ、恐る恐る「サンプルを届けてきてほしい方がいるのですが……」とお願いしてみると、まさかの快諾。ちょうどワーキングホリデーでヘルシンキに滞在中のいとこの夏実さんも同行してくれることになりました。

 というわけで、今回の月刊ステテコ11月号は「ステテコドットコムに頼まれて、伊藤さんが吉澤さんへパジャマを届ける旅」をお送りいたします。

Diary & Photography  : Yutaka Ito

Thanks to : Aoi Yoshizawa, Natsumi Oyama

Edit : steteco.com

 

夏も冬も海を渡って

 お届け先となる「ハラッカ島」とは、ヘルシンキ沖に浮かぶたくさんの離れ小島のひとつ。吉澤さんはこの島にあるアーティストハウスのスタジオを活動の拠点としています。市内からのアクセスはとても好く、ヘルシンキ市南部のカイヴォプイスト公園の桟橋から有料のフェリーボートで5分ほど。

 フィンランドでは貴重だという太陽の日差しのもと、2人を乗せたフェリーボートが島へ着くと、吉澤さんがお出迎えしてくれました。「はじめまして」のご挨拶を交わしながら、丘の上にあるアーティストハウスへ向かいます。

 この日、伊藤さんたちはフェリーボートで海を渡ってきましたが、なんと吉澤さん、フェリーの運行がない時期は手漕ぎのボート15分ほど漕いで海を渡り、冬には海が凍ると歩いて渡る日もあるのだとか。

左:桟橋でこの木製のコールサインを挙げておくと 右:フェリーボートが迎えにきてくれます

ハラッカ・アーティストハウス

 ハラッカ島のアーティストハウスは冷戦時代までは軍の化学研究所として使われていたそうで、その後ヘルシンキ市の所有となってアーティストや職人へスタジオとして貸し出されました。

 まずは1階にある吉澤さんのスタジオを覗かせてもらうと、部屋の中にはアート作品に使われる素材や、トライアルの痕跡がたくさん。吉澤さんは2018年からこのスタジオを利用しており、現在はテキスタイルを織る「織り機そのものの」自作に取り組んでいるのだそう。

たくさんの色がある吉澤さんのワークデスク

吉澤 葵さんと北欧

 2階の広い部屋に移動し、吉澤さんが用意してくれたハーブティとシナモンロールをご馳走になりながらお話を聞きました。

窓から望むフィンランド湾

 吉澤さんは日本の大学を卒業してスウェーデンの芸術学校へ留学。さらにノルウェー第2の都市ベルゲンの国立アートアカデミーとフィンランドのアアルト大学院でテキスタイルアートを学び、現在はフリーランスのデザイナー/アーティストとして活動中。

 その豊富な経歴による北欧各国のキャラクター分析に、旅好きの伊藤さんと夏実さんは興味津々。北欧随一だというヘルシンキのおばさまたちのオシャレさや、フィンランド人と岩手県民の性格が似ている説など、話題は尽きません。

パジャマを開封

 そしていよいよパジャマが手渡されました。風呂敷を解くと「素敵、いいですねー」と第一声。薄いグレーが掛かった下地に、ブルーのドットが無数に浮かびます「(ドットの)スケールがどういう感じになるのかわからなかったけど、いい感じの大きさです。素敵です」と、なかなかの好印象。

パジャマのサンプルを手にする吉澤さん

 自然からインスピレーションを得ることが多いという吉澤さんが描いた無数のブルー。夏実さんはその色を見て「フィンランドの空の青だと思った」とたとえてくれました。眩しい日差しに照らされたパジャマ談義ののち、「届けてくださってありがとうございました」との吉澤さんの言葉に、「今日この瞬間まで風呂敷包みを開けずにずっと我慢してきてよかった」と胸をなでおろす伊藤さん。

夜を待つパジャマ

吉澤さん「どこかで読んだのですが、いいパジャマを着ると、いい出会いがあるらしいですよ」

伊藤さん「じんわりと出会いがありそうですね」

 はるばるフィンランドまでパジャマを届けてくれた伊藤さん、本当にありがとうございました。今回のこの記事は、帰国後の伊藤さんから届いた写真や音声データやメモなどを編集したものです。最後に、伊藤さんが添えてくれた言葉をそのまま、掲載したいと思います。

1階の葵さんの部屋に戻り、作業場の説明

その後、開催中の島内展示を案内してもらいつつ散歩

葵さんも出展。階段からぶら下げられたブルーの糸

出入口ちかくで風で揺らいでいた

見晴らしのいい高台

林を抜ける道

軍施設跡のトンネル

ひとまわりして桟橋へ

ご挨拶をしつつ渡船を待つ

葵さんに見送られ離岸

おわり

<登場する人>

伊藤 裕さん

岩手県出身のグラフィックデザイナー。大きな体いっぱいに紙と文字と地域の物語への関心が詰まっている。好物は地元の長沢屋の「黄精飴」。雨天時はできるだけ傘はささずフードで対応。Instagram : @erykahforbidden

小山 夏実さん

この夏からワーキングホリデーを利用してフィンランドに滞在中。伊藤さんの従姉妹でもあり、ヘルシンキを中心に美味しいものと可愛い犬猫を探して日々歩き回っている。初めて覚えたフィンランド語は「pidän koirista(私は犬が好きです)」。 Instagram : @natsumi_0810_photo

吉澤 葵さん

ヘルシンキを拠点に活動するアーティスト/デザイナー。ご縁あってステテコドットコムは初めてコラボレーションさせていただくことができました。今回のグラフィックデザインは「Unikuplia(=Sleepy Couple)」と名付けられています。Instagram : @moiaoi

*吉澤葵さんとのコラボレーションシリーズはこちらをご覧ください(11/1現在、半纏のみ発売中です。パジャマはもう少々お待ちください!)

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