釣り船 鶴丸 船長 鶴蒔英紀さん(はたらくステテコ その1)

はたらくステテコ その1

「釣り船  鶴丸  船長   鶴蒔英紀さん」

写真・文  加瀬健太郎

 

おはようございます。僕、ケンちゃん。9才です。今は、朝の6時、神奈川県の佐島港に来ています。今日は釣り船に乗せてもらうんだ。うれしいなぁ。
ケン
ケン

ボッボッボッボッボッ(船のエンジン音)

うわぁ、港に船が入ってきた!
ケン
ケン

鶴蒔さん(以後 鶴蒔)
鶴蒔さん(以後 鶴蒔)
おはよう、ケンちゃん。早いのによく起きれたね。
おはようございます。楽しみで珍しく早起きしちゃった。今日はよろしくお願いします。
ケン
ケン
鶴蒔
鶴蒔
よろしく。じゃあ、船に乗って。
はーい。
ケン
ケン

船長 鶴蒔さんの一日

午前4時  起床

朝ごはんの後、魚を冷やす氷を買ったり、餌の準備。

午前6時  港でお客さんに会う。餌を配ったり、お客さんの車の移動など。

午前6時半 出港。

釣り始めると、お客さんにアドバイスしたり、釣れた魚を引き上げる手伝いをしたり、

お客さん同士の絡まった釣り糸(オマツリと呼ばれている)を解いたりする。釣れないなと思ったら、違う場所に移動する。とにかく動いている。

午後12時  お昼のカップ麺を配る。船の上で食べるカップ麺うまし。

午後14時  下船。お客さんと雑談。船の掃除 明日の準備。

船を船着場に停めに行く。

午後16時   餌を買いに行ったり、餌の下ごしらえをして終了。

鶴蒔
鶴蒔
じゃあ、釣り始めてください!
船長、他にもたくさんの釣り船が集まってるよ。
ケン
ケン
鶴蒔
鶴蒔
そうだよ。魚の集まる場所を「ねっこ」って言ってね、時期時期によって集まる魚と場所が違うんだけど、今の時期はここに「イサキ」なんかがよく集まるんだよ。
へー。みんないっぱい釣ってるよ!すごいね。
ケン
ケン
鶴蒔
鶴蒔
さあ、ケンちゃんも見てないで、25M~30Mぐらい仕掛けを下ろして、そこでシャクって(竿をクイって揺らして、針の近くについているカゴから餌を撒き散らして魚を集める)待ってて。
うわー、船長!引いてるよ、すごい力だ。うあっ、釣れた!イサキだ。やった!
ケン
ケン
鶴蒔
鶴蒔
よかったね!ケンちゃん。僕はね、釣れて喜んでいるお客さんの顔を見るのが、この仕事をしてて一番の喜びなんだ。特にケンちゃんみたいな初心者の人の喜んでいる顔を見るのがね。
そうか、じゃあ反対に大変なことってなあに?
ケン
ケン
鶴蒔
鶴蒔
そうだな、やっぱり釣れないことかな。あとは海が荒れたりして船が出せない時だね。今年も1週間半ぐらいの間、船を出せなかった事もあったんだよ。
それは大変だね。船長は、なぜこの仕事始めたの?
ケン
ケン
鶴蒔
鶴蒔
この仕事始める33歳までは、料理人だったんだ。趣味で釣りも好きでね。それで漁師居酒屋を始めようと思ったんだけど、漁師でもないのに漁師居酒屋すると、嘘になっちゃうだろ?そんな時、釣り雑誌を見てたら、釣り船屋さんの「若船長募集」ってのを見つけて応募したってわけ。そこで13年間働いて、組合員になって6年前に独立したんだ。
組合員って?
ケン
ケン
鶴蒔
鶴蒔
組合員にならないと港に船が置けないから、釣り船屋さんができないんだ。昔は、よそ者は組合員にはなれなかったんだけど、骨埋める気で一生懸命働いて、周りの人も「いいんじゃねえか」ってことになって、組合員になれたんだよ。
頑張ったんだね。今は船も二隻あるけど、儲かってんじゃないんですか、船長さ~ん?
ケン
ケン
鶴蒔
鶴蒔
ケンちゃん、そんなに甘くないよ。いつでもギリギリだよ。船だっていつ壊れるか分かんないしさ。
そうか、僕のお父さんもカメラマンで、よく青い顔して「不安だ不安だ」ってお酒に逃げてるもんね。大人って大変だね。
ケン
ケン

ケンちゃんは思った。
海の男はカッコいい。潮と太陽に焼かれた顔も凛々しいなぁ。
いつもは、お父さんの「ビックコミックオリジナル」を拝借して、
「釣りバカ日誌」を読んでるだけの僕だけど、やっぱり本物の釣り
は最高だ。僕も大人になったら、週末にス―さんみたいな会社の会
長と一緒に鶴丸に乗って、釣りを楽しみたいなぁって。

夕暮れ時、一仕事終えた鶴薪船長の乗った船が、夕日の中に消えて
いった。

ボッボッボッボッボッ。

おしまい。

はたらくステテコのムービー(鶴蒔さん編)はこちらから!

鶴蒔さんの船の詳細ついてはこちらから!(佐島港 鶴丸ホームページ)

 

 

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