

今月の絵『温度計』 by Ryu Itadani
みんなで考えよう、暑い夏と海
今年の夏も猛暑日が続いており、エアコンの設定温度を下げたくなる一方で、電力不足への心配もあります。あちこちで起きている豪雨による災害や生活への影響も深刻です。
そもそも、地球はなぜこんなことになってしまっているのでしょうか? 今回は「海と人を学びでむすぶ」をテーマに、地球温暖化や海のゴミ問題などについて考えるきっかけづくりをしている、一般社団法人「みなとラボ(3710Lab)」を訪ね、代表の田口康大さんにお話を聞いてきました――
みなとラボ代表の田口康大さん
地球温暖化で、海に何が起きている?
―― 毎日のように猛暑関連のニュースを見聞きしますが、この暑さと海にはどんな関係があるのでしょうか?
田口さん 地球環境の温暖化について問題になっているのは、温室効果があるCO2(二酸化炭素)を海が吸収しきれなくなって、大気中にどんどん増えちゃっていることなんです。地球が温暖化しているというよりも「海が温暖化している」と考えた方が正しい理解ができると思いますよ。
―― 海が温まるとどんなことが起きるのですか?
田口さん 水温がずっと高いので、強く長続きする台風が発生しやすく、ゲリラ豪雨も発生します。それに海の生態系にも影響して魚が捕れる場所が変わってくるので、ある地域に長い間根付いていた食文化が失われるということも出てきてしまいます。海藻が採れなくなってしまえば日本人が大好きな出汁も作ることができなくなってしまうわけです。
―― 食生活にまで影響があるなんて。
“自分”だけじゃなく“みんな”で考える
―― そうすると自分たちの暮らしから、いかにCO2を出さないかが大事ですよね。
田口さん 個人のレベルだとそうだと思いますが、とはいえエアコンを使わないと危険ですから、バランスを探りながら生活をどこまで変化させるかってことになっていくと思うんですよね。
―― 打ち水とか風鈴とか、昔ながらの涼のとり方があると思いますが、海にまつわる「涼のとり方」はご存知ですか?
田口さん やっぱり海辺のまちづくりってよくできてるなと思います。海風が吹くので道路も建物も風の通りをよくするようなまちづくりになってるんですよね。だから海辺のまちに行くと風が気持ちいいなと思いますよ。あとは最近調べていておもしろかったのが「海城(うみじろ)」ですかね。
―― ウミジロ??
田口さん 一般的にお城って山にあるイメージだと思うんですが、海沿いに建っている「海城」というのがあって、高松城なんかもそうなんですけど、多くは瀬戸内海にあるんですよ。内海に面して作られることがほとんどなので、東のほうには数が少なくて。
―― おもしろいですね。
田口さん 海城は潮の満ち引きで海の見え方が変化することで、お殿様が涼しさを享受していたのではないかという考察があったりもします。それに夕日をどうやって取り入れるかということも意識して高松はまちがつくられていたようで、変化する自然とともに暮らす知恵が息づいていたののかもと思うんです。
―― 暑さや涼しさと調和するような暮らしをみんなでつくっていたと……
田口さん その場にある環境を活かして身近に涼を感じられるようにする考え方は、現代でもできると思うんですよね。今よりも昔はもうちょっと全体で、みんなで自然を共有してたんじゃないかなと思います。暑さ対策についても個人でできることって考えがちですけど、もう少しみんなでできることって視点を取ると、1人だとできないけど、2人だとできるとか、新しいアイデアも生まれると思います。
―― なるほど、ありがとうございます。最後に、みなとラボの活動の中から、夏におすすめのものを教えてください。

田口さん 写真家と一緒に取り組んでいる「Sea the Sea」というプロジェクトをおすすめしたいですね。作家ごとにポストカードとポスターがセットになっていて、家の中にちょっと飾ってあるだけでも涼しさを感じると思います。*みなとラボのウェブサイトから購入可能です。
―― 写真家ご本人のエッセイも読めるんですね。今日は貴重なお話をありがとうございました!
田口さん ありがとうございました!
【みなとラボ(3710Lab)】
「海と人を学びでつなぐ」ためのプラットフォームとして、教育者や科学者だけでなく、写真家やデザイナーなど多様な専門家たちと連携して、学校や地域、自治体、そして子どもたちに海について考えたり、楽しんだりする機会を創出。現在は「海のミュージアム」をテーマにした新たなプロジェクトを準備中。
オフィシャルサイト : 3710lab.com
インスタグラム : @3710lab