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研究本部 開発日誌

vol7.池田哲也さんとの対談(2)

(以下  服飾評論家・池田哲也氏=池田 、 所長=所長)

所長  ところで、夏のステテコの代表的な素材、「クレープ」というのは池田
     さんからみればどういう魅力がある素材なんですか?

池田  伸縮性があるし、糸の撚りが強いので耐久性もあるしタッチも非常に
     ドライタッチですし。非常に特殊な生地なので世界の高級生地をつくっ
     ているイタリアにもこういう生地はないですからね。日本でそういうもの
     が細々となりつつはあるがまだ残っている。

所長  では、クレープ生地のステテコのこれからの課題というのは?

池田  今 スーツも細身になってるじゃないですか。パンツも。それに対応する
     形で変えていかなければいけないっていうのが課題でしょうねぇ。ただ
     これが本当に難しいところなんですけど、僕の経験から言うとあまり肌に
     ぴったりしてしまうと、あのクレープの機能・快適性って働かないんですよ
     ね。ある程度、こう なんて言うのか、和服的なちょっと肌にあたるぐらい
     のそういう形の方がクレープの良さを活かすには適してますよね。だから
     この素材を用いて細身に削れば成り立つかというとそれは違うんだと思
     う。極めて日本人的な肌と生地との距離感というか、そのレベルまで伝
     統工芸品だと思いますよ。よくも悪くも。
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所長  そもそも、池田さんとクレープ肌着の出会いはいつだったんですか?

池田  18才の頃ですね。

所長  きっかけってあったんですか?

池田  当時、肌着屋さんでアルバイトしてたんですよ。

所長  え、そうなんですか!

池田  で当時やっぱりカルバンクラインとかジョッキー、その他のアメリカブ
     ランドの肌着を売っていて。そういったのも売るし着てたんですけど、
     当然 日本の肌着じゃないわけじゃないですか。その当時でも自分
     の父親なんかが着ているのはクレープを着てるわけで、一度こういう
     のも着てみないとということで着始めたんですけどね。でやっぱり18、
     19、20歳ぐらいのときに「あーファッショナブルではないけれども日本
     の気候・風土的には間違いなくこっちの方だろうな」とは思いましたよね。
     それに、カルバンクラインとかジョッキーは別として、他のアメリカブランド
     の肌着にいたっては半年で買い換えるようなつくりになってましたから。
     伸びたり縮んだり、穴開いたりで。大量生産、大量消費の流れじゃない
     ですか。20年ちょっと前っていうのはまだ日本にそういう文化風潮が来
     てませんから、だから当然肌着なんかも長持ちしますよね。お国柄の違
     いだし、そういう消費スタイルの違いみたいなのを感じましたよね。

所長  なるほど。それから20年たち、日本のモノヅクリの現場でも、ともす
     れば品質よりも価格・コストの方が優先されがちに最近ではなってき
     ているように思います。

池田  でも今ね、またモノを大切にする時代が徐々に来てるんじゃないかと
     思うんですよ。チノパンが1900円だとかフリースが980円だとかって
     言ってるけどそういう時代でもないんじゃないかと。9800円のチノパン
     でも10年はけて、10年たってほころんできたけど、10年たって素材も
     やわらかくなってきて俺はこのチノパンが大好きでどうしても捨てられな
     い。10年はいて1年あたり980円。9800円で買ったけど、これって安
     いよね ってそういう時代になってくるんじゃないのって。肌着とかでも、
     高くても本当に良いものがあるんですよ。5年10年着て ちょっとすす
     汚れてちょっと他の人には直接は見せられないけどそれでも着たいと
     思わせるものってのが。僕はやっぱりそういう時代になってくると思いま
     すけどね。何となくは気付いているでしょう。もう食べ物でも何でも今まで
     やりたい放題、使いたい放題、余れば捨てるし、そういうのをずっと続け
     てきたわけですよ。でも、石油が1バレル100ドルを越えたとか、繊維の
     天然素材も4割5割普通に値上がりしてきているわけじゃないですか。
     大干ばつでオーストラリアの乳牛がとれなくて、バターが売ってないとか。
     なんとなくやっぱりもう気付かないと。みんなが湯水のように何でもやって
     きちゃったけど、ここらで僕らの今までの生活そのものを考え直さないと、
     と思うんですよ。

               (次回 「服飾評論家・池田哲也さんとの対談(3)」に続く)

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