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研究本部 開発日誌

(以下  服飾評論家・池田哲也氏=池田 、 所長=所長)

所長  ところで、夏のステテコの代表的な素材、「クレープ」というのは池田
     さんからみればどういう魅力がある素材なんですか?

池田  伸縮性があるし、糸の撚りが強いので耐久性もあるしタッチも非常に
     ドライタッチですし。非常に特殊な生地なので世界の高級生地をつくっ
     ているイタリアにもこういう生地はないですからね。日本でそういうもの
     が細々となりつつはあるがまだ残っている。

所長  では、クレープ生地のステテコのこれからの課題というのは?

池田  今 スーツも細身になってるじゃないですか。パンツも。それに対応する
     形で変えていかなければいけないっていうのが課題でしょうねぇ。ただ
     これが本当に難しいところなんですけど、僕の経験から言うとあまり肌に
     ぴったりしてしまうと、あのクレープの機能・快適性って働かないんですよ
     ね。ある程度、こう なんて言うのか、和服的なちょっと肌にあたるぐらい
     のそういう形の方がクレープの良さを活かすには適してますよね。だから
     この素材を用いて細身に削れば成り立つかというとそれは違うんだと思
     う。極めて日本人的な肌と生地との距離感というか、そのレベルまで伝
     統工芸品だと思いますよ。よくも悪くも。
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所長  そもそも、池田さんとクレープ肌着の出会いはいつだったんですか?

池田  18才の頃ですね。

所長  きっかけってあったんですか?

池田  当時、肌着屋さんでアルバイトしてたんですよ。

所長  え、そうなんですか!

池田  で当時やっぱりカルバンクラインとかジョッキー、その他のアメリカブ
     ランドの肌着を売っていて。そういったのも売るし着てたんですけど、
     当然 日本の肌着じゃないわけじゃないですか。その当時でも自分
     の父親なんかが着ているのはクレープを着てるわけで、一度こういう
     のも着てみないとということで着始めたんですけどね。でやっぱり18、
     19、20歳ぐらいのときに「あーファッショナブルではないけれども日本
     の気候・風土的には間違いなくこっちの方だろうな」とは思いましたよね。
     それに、カルバンクラインとかジョッキーは別として、他のアメリカブランド
     の肌着にいたっては半年で買い換えるようなつくりになってましたから。
     伸びたり縮んだり、穴開いたりで。大量生産、大量消費の流れじゃない
     ですか。20年ちょっと前っていうのはまだ日本にそういう文化風潮が来
     てませんから、だから当然肌着なんかも長持ちしますよね。お国柄の違
     いだし、そういう消費スタイルの違いみたいなのを感じましたよね。

所長  なるほど。それから20年たち、日本のモノヅクリの現場でも、ともす
     れば品質よりも価格・コストの方が優先されがちに最近ではなってき
     ているように思います。

池田  でも今ね、またモノを大切にする時代が徐々に来てるんじゃないかと
     思うんですよ。チノパンが1900円だとかフリースが980円だとかって
     言ってるけどそういう時代でもないんじゃないかと。9800円のチノパン
     でも10年はけて、10年たってほころんできたけど、10年たって素材も
     やわらかくなってきて俺はこのチノパンが大好きでどうしても捨てられな
     い。10年はいて1年あたり980円。9800円で買ったけど、これって安
     いよね ってそういう時代になってくるんじゃないのって。肌着とかでも、
     高くても本当に良いものがあるんですよ。5年10年着て ちょっとすす
     汚れてちょっと他の人には直接は見せられないけどそれでも着たいと
     思わせるものってのが。僕はやっぱりそういう時代になってくると思いま
     すけどね。何となくは気付いているでしょう。もう食べ物でも何でも今まで
     やりたい放題、使いたい放題、余れば捨てるし、そういうのをずっと続け
     てきたわけですよ。でも、石油が1バレル100ドルを越えたとか、繊維の
     天然素材も4割5割普通に値上がりしてきているわけじゃないですか。
     大干ばつでオーストラリアの乳牛がとれなくて、バターが売ってないとか。
     なんとなくやっぱりもう気付かないと。みんなが湯水のように何でもやって
     きちゃったけど、ここらで僕らの今までの生活そのものを考え直さないと、
     と思うんですよ。

               (次回 「服飾評論家・池田哲也さんとの対談(3)」に続く)

出会いは多々にして突然に、そして思いがけなく訪れる。

服飾評論家・池田哲也さんは大学卒業後、某大手百貨店に入社。ローマに駐在中
イタリア各地の服飾職人の工房を訪ね歩き見識を深められた。その後、同社を退社
され、現在は服飾評論家としてご活躍中、という経歴をお持ちの方である。

所長にとって非常に幸運だったのは、池田さんが20年来、「三ツ桃クレープ(※)」を
愛用して下さっているということ、そして、雑誌社向けにCOOLBIZ特集の原稿を書く
際にアズにクレープ肌着について問い合わせをしてこられたということである。
(※「三ツ桃クレープ」...日清紡績株式会社のクレープ肌着ブランド。
               昭和39年よりアズが製造総販売元となっている。)

( 以下、池田さん=池田 、所長=所長) 

池田  いきなりですが、ステテコがいわゆる市民権を失ったきっかけは何だと
     思われてますか?何故、売れなくなっちゃったのか??

所長  すいません、わかりません。

池田  では、白いブリーフがちなみに市民権を失ったきっかけはわかりますか?
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所長  すいません、やはりわかりません。。

池田  機能的にも優れていて、日本でも一昔前までは普通にみんながはいていた
     アイテムがいつの間にか市民権を失っている。

所長  確かに、そういわれてみればそうですね。不思議です。

池田  同じことがティアドロップ型のサングラスにも言えますよね。今、ヨーロッパでは
     最も旬なサングラスの一つとされていて、昔から僕は好きでいくつも持っている
     んですけど。実際、極めて合理的で、あれを超えるサングラスはなかなか無い。
     もう完璧なんです。フレームの構造的なものも、支えと力の逃がしも。人間工学
     的にかなり究極の形と言えるんですよ。全く昔ながらのカタチでヨーロッパでは
     売れに売れているのに、でも日本では売れない。
     
所長  ステテコ、白いブリーフ、ティアドロップ型のサングラスに共通して言えること。
     も、もしかして!!

池田  そう、日本においてこれら3つに共通して言えるのは、ある時点からお笑い芸人    
     のユニフォームと化してしまったということなんです。

所長  なるほど。でもティアドロップ型サングラスとかは、お洒落な人、最先端な人
     が取り入れたらまた状況が変わってくる可能性あるんじゃないですか??

池田  いやぁ、あの吉本芸人のふんどし姿にサングラスは強烈ですからねぇ(笑)
     やっぱりなかなか逃れられないですよねぇ。そういうケースってすごく多いん
     ですよ。白いブリーフだって理にかなっているし、実際、はいてみると快適じゃ
     ないですか。ボクサーブリーフとかはやっぱり夏場は暑かったりだとか、 
     型紙的に欧米人に比べて日本人にはあまり合わなかったりするんですよ。
     でもやっぱり、白いブリーフには戻らないですよねぇ。欧米では有名ブランドも
     アイテムの1つとして出していて普通に愛用している人もいて、決して白い
     ブリーフが恥ずかしいものだとかってイメージが向こうにはない。でも、日本
     だったら若い旦那さんとか彼氏が白いブリーフをはいていたら泣くでしょう。
     
所長  確かにびっくりしますよねぇ。何があったんだろう、この人にって(笑)
      それにしても、白いブリーフはともかく、ステテコに関しては、以前は下着とし
      てだけではなく、「ブラッとご近所まで」の1マイルウェア的な市民権も持って
      いたにも関わらず。。

池田   まぁ、僕が住んでる界隈では今でもたまにステテコ姿で歩いている人を見か
      けますけどね(笑)

所長   どこまで出来るかはわかりませんが、徐々に徐々に現代に蔓延しているステ
      テコのイメージを変換していきたいです。

                         (次回 「池田哲也さんとの対談(2)」に続く)

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